ロシアと中国Russia and China

パートナーシップはロシアよりも中国にはるかに有利Partnership is much better for China than it is for Russia

中ロ蜜月がどれほど良いのかが明らかになるのは数年先だろう

2019/07/27

Leaders

中国―ロシア―米国は、国際政治において「三角関係」になっている。第2次世界大戦後、これら3か国は付き合う相手を何度も入れ替えてきた。1950年に中ソ友好同盟相互援助条約が締結されたが、ソビエト連邦のヨシフ・スターリン死去後、中ソの関係は悪化した。そして、1972年にリチャード・ニクソン米大統領が中国を訪問し、米中が接近。さらに、今からちょうど30年前の1989年にゴルバチョフ書記長が中国を訪問し、中ソは寄りを戻した。そして今日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平(シー・ジー・ピン)国家主席は相思相愛の関係にある。このペアマッチングが強固になったのは、2014年にロシアがクリミア自治共和国を併合してからだ。いずれのケースにおいても、ペアからとり残された国は、軍事的にも外交的にも一層の努力を強いられ、独り身の代償をつねに支払わされてきた。

 

だが、今回は様子が違う。のけ者にされているのは米国だが、その代償を支払っているのは主にロシアなのだ。中ソ関係のあらゆる側面において中国は優位に立っている。中国の経済規模はロシアの6倍(購買力平価換算)であり、衰退するロシアの軍事力を尻目に、中国の軍事力は伸長し続けている。欧米諸国に背を向けロシアの影響力を拡大させることが秀逸な方法であるとプーチン氏には思えても、それはロシアが逃れるのが困難だと気づく「落とし穴」のようだ。ロシアは中国の対等なパートナーであるどころか、中国属国化の道を進んでいる。

 

これは厳しい判定に思えるかもしれない。ロシアは依然として核大国であり、国際連合安全保障理事会の常任理事国である。同国は、軍事力の近代化を図り、シリアでの例にもあるように、武力行使を恐れない。ロシアと中国は7月23日、初の空軍合同警戒活動と思われるものを実施し、ロシア軍機が領海侵犯に及んだとして韓国からの抗議を誘った。

 

だが、実際のところ、ロシアは巨大な隣国中国へ急速に依存するようになっている。中国はロシアの原材料の重要な輸出先である。ロシアの国営石油会社ロスネフチは、中国から資金供与を受け、中国向け石油輸出量を増やしている。ロシアは、米ドルの覇権を避けようとしている一方で、外貨準備高における中国人民元建て資産の比率を大きく引き上げている(2018年、ドル建て資産は23%に半減し、人民元は3%から14%に増加)。中国は、ロシアの高度兵器システムの重要な部品や、プーチン氏がロシア国民を統制するために必要な社会監視ネットワークシステムや警備用品を提供している。ロシアは先月、米国が安全保障上の脅威と見なしている中国ハイテク企業ファーウェイ(華為技術)と5Gネットワークを構築する契約に合意したが、これにより、中国の超高速通信網の半分にロシアがしっかりと埋め込まれることになった。

 

これはまさに中国にとってうってつけの状況だ。中国は、1969年の中ソ軍事衝突の現場でもあり、ロシアが西側陣営に取り込まれてしまうようにみえた1990年代には心配の種にもなっていた、北部のロシア国境付近を確保するためにもロシアとの永続的な友好関係を求めている。また、ロシアは、「色の革命」*の誘因であると両国が捉える、「普遍的人権と民主主義という西側の価値観」を崩壊させようとする中国の運動において熱心な急先鋒である。 

 

*注: 2000年代に複数の旧ソ連国家で独裁的政権の交代を求めて起こった民主化運動が、非暴力の象徴として色や花の名を冠したことを指す。

 

プーチン氏は、そうした西側の自由主義的価値観に対する中ソ共通の敵意に加えて、中国とのパートナーシップを擁護する主張をいくつか示すだろう。一つはそれが得策であるからだ。クリミア併合後に西側が発動した経済制裁や、2016年の米国大統領選挙への介入、2018年に英国でロシアの元スパイと娘に神経剤が使われたとされる殺人未遂事件によって、ロシアには多くの選択肢が残されなくなった。そうした中、中国は、ロシアのシリア内戦への軍事介入に関してロシアに逃げ場を与えており[訳注:中国は大国によるいかなる介入を拒否]、クリミア併合に関してもある程度同様の行動をとっている[訳注:中国は対露制裁を実施した欧米諸国を暗に批判する立場をとる]。ロシア初代皇帝ピュートル1世が欧州を「発展の源泉」として期待した17世紀末とは対照的に、プーチン氏は今や、「未来は中国とその国家資本主義のシステムの時代である」ともっともらしく主張するだろう。

 

だが、プーチン氏は間違っている。まず、ロシア版の国家資本主義は、レントシーキング[訳注:民間企業などが政府や官僚組織へ働きかけを行い、法制度や政治政策を変更させて、超過利潤を求めること]であり、それは生産性を奪ってプーチン氏の取り巻きらに、国庫から金を自由に出せることを可能にする「盗みのライセンス」を与えることだ―このことは、ロシアにおける中国の民間投資が控えめな理由の一つである。次に、プーチン氏が自国のかつての偉大さを回復しているのだと主張するものの、ロシアが中国に対して従属的な役割を果たしているという現実がますます明らかになるという矛盾が生じており、それが中央アジアにおける緊張を生み出す。中国は、国内の治安のために同地域の安定が欠かせないため、中央アジアからイスラム過激主義を遠ざけることを願っている。中国人民解放軍が、ロシアに事前承諾なく、タジキスタンに軍を駐留させ、軍事演習を行っているのはこうした理由からだ。

 

そして、ロシアと中国のそれぞれの目的はある程度、方向性が異なる。ロシアの一般国民が西側の自由をどれだけ諦められるかには限度がある。ロシア政府が中国の社会監視システムの技術を使って政権を維持すれば、中国とそのロシア人顧客に対するロシア市民の怒りに火を注ぐだろう。

 

中ソ間にそうした緊張が表面化する日がいつなのかは誰もわからない。例えば、プーチン大統領がロシア憲法に従って2024年の任期切れに伴い退任すると決め、その後継者が変化の記念にと、ロシアから中国を遠ざけ、欧州に向き直る場合を想像してほしい。そうしてはじめて、中国の影響がいかに根深くロシアに浸透し、中国がその影響力を維持しようとどれほど多くの圧力をかけようとしているかが明らかになるだろう。ロシアの次期大統領は自国が軌道修正できる余地を失ったと気づくかもしれない。

 

では、中国以外の国々――特に西側諸国――は、遅きに失する前に、中国の包囲網からロシアを引き出すべきということなのか。この考えは、ロシアはあまりに重要なために疎外できない、と考える外交官やアナリストたちにとっては魅力的だ。だが、それが起こる可能性が低いようだ。米国は、冷戦下ではそうだったかもしれないが、今日の中ソの結束に悩まされない。ロシアと中国は、西側の普遍的価値の概念に確かにダメージを与えるが、ホワイトハウスにトランプ大統領がいるかぎり、そうした民主主義の基本原則は、残念なことに、いずれにせよほとんど普遍的に適用されていない。

 

さらに、中国のロシアに対する影響力には代償が伴う。ロシアのような怒れる衰退しつつある超大国は危険である。ロシアは、依然として考慮にいれるべき大国であると示したいがために、例えばベラルーシを脅す、あるいは、ロシア極東地域に中国人移民が大量に押し寄せかねないとの常に存在してきた恐怖を煽ることによって、突如攻撃的になりたくなるかもしれない。だが、中国は、自国が企図したものでないかぎり、国家間の危機に食指を動かさない。中国はロシアのパートナーとして、共通の国境沿いに安心感の源泉としての役割を果たし、そして、世界各地でのロシアの行き過ぎた行動を抑えることができる。

 

待てば海路の日和あり

西側は、ロシアを激しく非難する、あるいは、自分たちの側にもどるよう説こうとするよりも、ロシアの中国属国化を指摘し、待つことが肝要だ。やがて、ロシア政界にアレクセイ・ナワリヌイ氏[訳注:同氏は反汚職・リベラル・親欧米などを掲げる「進歩党」を結成]のような大統領か、あるいは彼に似た人物が現れて再び西側に目を向けるだろう。その時こそ、ロシアが西側の助けを最も必要とする時だ。そしてその時こそ、米国大統領は、リチャード・ニクソン元大統領[訳注:冷戦下ソビエトとの核兵力削減に尽力した]をまねて、モスクワを訪問すべきである。

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