月刊正論:6月号から  
-------------------------------------------------------------------
産経新聞社「月刊正論」からEISへの提供コラムです。
-------------------------------------------------------------------
   駐日大使に直撃インタビュー
 馬政権誕生で攻守所を変える台湾政局

   新総統が公約を守るなら台湾の民主化・本土化の流れは止まらない。
今度は国民党が批判を覚悟する番だ
(P242〜249) 
 
台北駐日経済文化代表処代表●コー・セーカイ 許 世楷 


 

 3月に行われた台湾総統選挙は、最大野党・中国国民党の馬英九前党主席が、台湾生まれの与党・民主進歩党の謝長廷元行政院長(首相)を破って8年ぶりに政権を奪回した。1月の立法院(国会)選挙の勝利に続き、戦後の台湾を半世紀以上にわたって支配した国民党が行政と立法を一手に掌握したことで、今後の台湾は、徐々に中国寄りの姿勢に変わる可能性もある。李登輝前総統の時代から進められてきた台湾の本土化(台湾化)・民主化・自由化の流れはどうなるのか。また20年近く続いた台湾の親日路線に変化は生じるのか。駐日台北経済文化代表処の許世楷代表(大使)に聞いた。
 
誰が総統になっても台湾の課題は変わらない
 
 ――「台湾人政権」の存続を訴えた謝長廷氏と馬英九氏の票差は220万票以上も開きました。事前の世論調査では、支持率で馬氏が謝氏を大きくリードしていましたが、終盤戦ではチベット問題などが謝氏の追い風になると思われました。それが予想外の大差となったということは、台湾人のいかなる民意が反映されたとお考えですか。

 許 今回の総統選挙は、事実上、中台両岸関係や経済の振興策が主な争点になりました。与野党両候補の主張に4年前の総統選ほどの差異はなかったのです。たしかに謝氏は「台湾人」意識を強調し、「馬英九氏が当選すれば、国際社会は台湾人が『台湾は中国の一部である』と認めたことになる恐れがある」と訴えましたが、馬氏は、「自分も台湾人である」と切り返し、自分の任期中に「統一しない」「独立しない」「武力行使しない」の"3つのノー"政策を打ち出しました。国内総生産(GDP)の3%を軍事費に回すとか――現在は2%――、台湾海峡の防備を固めるとか、台湾独立に関する政策面での主張は、実は謝氏とあまり差がなかったのです。

〈2・28事件〉に対する姿勢も――約3万人が犠牲になった外省人による本省人への弾圧事件ですが――、馬氏は被害者への謝罪を表明し、これまた謝氏と差がなかった。チベット問題についても、馬氏は、場合によっては北京オリンピックをボイコットすると述べました。謝氏もチベット問題についての懸念を表明しましたが、馬氏のほうがより踏み込んだ、強い発言でした。

 台湾人意識が、李登輝氏の政権時代に大いに喚起されたことは周知のとおりです。最近の調査(台湾・政治大学選挙研究センター)によれば、自分を「中国人」と考える国民の比率は昨年6%を切り、「自分は台湾人でもあり中国人でもある」という意識を持つ層を加えると、実に89.5%までが「台湾人」であるというアイデンティティを持つに至っています。

 こうした台湾人意識を前提に選挙結果を見ると、馬氏を台湾人として「信じるか、信じないか」という判断が下されたのであって、馬氏と謝氏の主張や政策の違いが反映されたということではない。馬氏が"3つのノー"を公約し当選したことは、台湾の自治、独立を守るという政治目的においては、もはや国民党をふくめ総与党化した表れだとも言えると思います。

 それから、生活実感からくる経済の停滞に対する国民の不満が大きかったことも選挙に影響しました。世界経済が後退局面にあるとはいえ、不況の責任はだいたいどこの国でも与党が取らされるものです。国民党はその点を攻撃し、中国との融和による経済の活性化を提唱することで、経済界の期待と支持を取り込むことに成功したわけです。

 ――中台間の政治的な対話は、中国側が陳水扁政権を交渉相手と見なさなかったため、この8年間途絶えていました。しかし、経済の実態を見ると、すでに10万社近い台湾企業が中国に進出し、その家族も含めると100万人以上が中国大陸で暮らしている。中台間の年間往来数はのべ450万人にも達しています。こうした中国経済に寄りかかる台湾人の急増が、台湾の独立や主体性の重視よりは、国民党の対中交渉力に期待しての経済回復を求めたということですね。

 許 繰り返しますが、馬氏の「私も台湾人」という言葉を信じる、その台湾アイデンティティを信じるという前提で、経済回復により大きな期待が持てる馬氏を選んだということだと思います。そこには「馬氏も台湾人(のはずだ)」という願望に近い判断も含まれていることは否めない。これは馬氏が台湾人ならざる政策を総統就任後に進めるとすれば、それへの大きな反発が生じる可能性を内包しているということです。「約束が違うではないか」ということになる。

 もう1つ見過ごせないのは、陳水扁政権が国民の支持を何ゆえに失ったのかという問題です。国民党の攻勢より前に自らの゛敵失≠ェあったのではないか。この反省がなければ民進党の再生はむずかしい。

 ――陳総統とその家族をめぐる金銭的な疑惑や、政権自体の腐敗、経済失政に対する批判の声はかなり前から上がっていましたね。それに民進党がきちんと対処できたかどうか。その意味での"敵失"はたしかに大きかった。

 許 投票率は前回2004年総統選の80.28%を4%近く下回る76.33%でしたが、この投票率低下の一因が民進党支持者の失望を表していたのではないかと思います。本来なら民進党支持層の何%かが、"敵失"に嫌気がさして投票に行かなかった可能性です。これらのことが微妙に重なり合って大差がついたと私は見ています。

 ――投票行動に関連して、若い人たちの間に国家観や歴史観の希薄さが見られ、それが経済重視の国民党支持に傾斜したという分析もありましたが、そのへんはどのように見られていますか。

 許 私が知るかぎりは逆ですね。20代から30代の台湾人は李登輝政権時代の『認識台湾』という台湾アイデンティティを重視した教科書で学んだ世代ですから、自然に台湾人という意識を持っています。台湾で生まれ、台湾で育った彼らにとって台湾という国は自明のもので、馬氏が総統になろうとそれは変わらない、変えられないと思っている。そして経済が悪いということに対しても、それほど強い不満を抱いているわけではない。

 むしろ不況を心配しているのは40代以上に多い。しかもこの世代は国民党時代の、学校で台湾語を話したら処罰されるというような教育を受けていますから、自分たちは中国人であるという意識をより強く刷り込まれている。選挙戦の終盤ですが、南部から台北に向けて謝氏を支持する若者たちがたくさん行進しました。彼らは生活苦を訴えることもなく、ただ「台湾を愛する」というメッセージを発し、ベトナム戦争当時の「LOVE&PEACE」を思い起こさせるものがありました。ちょっと図式化して申し上げれば、中年以降の世代は現実の経済回復を選択し、若者は理想を選んだと言えるでしょう。

心配なのは党利党略と中華イデオロギーの噴出
 
 ――5月20日に新しい正副総統の就任式が行われます。そこから国民党政権がスタートするわけですが、予想される変化にはどのようなことがあるでしょう。

 許 政党政治の観点からはっきりしているのは、今度は国民党が与党になるわけですから、政権運営の責任は彼らが負わねばならないということです。民進党は議会で多数を占めることができず、権力の捩れ現象が続いた結果、政治、経済で混乱を招き、政権自体の責任を問われることになりましたが、国民党は議会でも多数派を占める以上、そうした混乱は許されない。経済対策にせよ外交問題にせよ、うまくいかなければ必然的に国民党の責任になります。

 たとえばアメリカからの武器購入を民進党はスムーズに進められませんでしたが、これは議会多数派の国民党が国政上の必要性を承知しながら、「反民進党」という党利党略から反対を続けたせいです。今後はこのようなことは許されないし、逆に民進党の攻勢にさらされることになります。

 総統選の公約に差がない以上、国民党が公約の実現ができなければ台湾人の不信は一気に高まる。

 ただ国民党には、抗日戦争の頃からの中華イデオロギーがまだまだ残っていますから、それが台湾人意識を押し潰すようにふたたび社会全体に色濃く出てくる、"宣伝"されることは心配ですね。台湾の本土化(台湾化)・民主化・自由化を自明のものとして過ごしてきた若い世代にとってそれは許されるものではありませんから、そうした摩擦や捩れを承知で馬氏が公約を踏みにじるようなことがあれば、台湾国内に大きな混乱が生じると思います。

 まさに馬氏は大変な責任を負ったのです。総統選での公約にそって台湾の独立、主体性を維持し、アイデンティティを守っていくことに揺らぎがなければ、彼だけでなく外省人に対する印象も変わってくるでしょう。外省人と本省人の対立という台湾社会が長い間抱えてきた問題の解消にもつながるかもしれない。

 まずは台湾人(本省人)のほうが、これまでの溝を乗り越えて馬英九という外省人を信じたわけです。人口比でいえば外省人はもう1割程度に落ちています。本省人が馬氏に大量の票を与えたのは、ちゃんと公約を守ってくれということであり、何をやってもよいというフリーハンドを与えたわけではない。台湾という同じ船に乗る者として、運命共同体の一員である証しを見せてくれということだと私は解しています。それを馬氏が証明してくれれば、省籍対立を超えて台湾という国のアイデンティティのもとに素晴らしい未来が見えてくるわけです。

 ――そうした馬新総統の姿勢が見えてくる最初の課題は何でしょう。

 許 総統が選挙で選ばれるようになってから、外省人は総統になれないと言われてきました。馬氏はその指摘を気にしていたと思います。だから副総統候補に本省人の蕭万長氏(元行政院長)を選んで、「自分も台湾人だ」ということを補強したのです。その意味では、行政院長に誰を指名するかが具体的な方向性を示すものになると思います。

《3月11日付の台湾各紙によれば、馬氏は事務所を通じ、行政院長に劉兆玄・東呉大学学長を任命する方針を表明した。劉氏は中国・湖南省籍で、李登輝政権下の1990年代に交通部長(交通相)などを務めた。国家安全委員会秘書長には蘇起・前立法委員(国会議員)の起用が伝えられ、総統府秘書長(官房長官)には・春柏・国民党副主席が、対中民間窓口の海峡交流基金会理事長には江丙坤・同副主席が決った》

 ――馬英九総統で対米関係はどうなるでしょう。

 許 客観的にいってアメリカとの関係はこのところ軋みが生じていました。陳水扁総統が進めてきた「台湾」名義での国連加盟申請に対し、ネグロポンテ米国務副長官が昨年8月、「台湾独立宣言へのステップだ」として住民投票への反対を明確に表明したほか、国家安全保障会議(NSC)のワイルダー・アジア上級部長にいたっては「国連は国家でなければ加盟できない。台湾、つまり中華民国は現状では国際社会において国家とみなされない」とまで発言し、台湾の独立派を逆なでするような感じになりました。ライス国務長官も、住民投票については「挑発的な政策」と批判的でした。

 ただ、中国の軍事的脅威への懸念や、台湾の民主化を支持するアメリカの原則が変わったわけではないと私は見ています。総統選に際し、台中の軍事的緊張を警戒して「訓練」の名目で台湾海峡に空母を2隻派遣し、現在に至っているのもその表れでしょう。アメリカの立場は、ブッシュ大統領が米中首脳会談でも語った「台湾海峡の現状の一方的変更には反対する」というもので変わっていない。そのこと自体は理解できるのですが、現状を維持するためにもある程度アグレッシブに振る舞わなければならないという台湾の事情をもう少し汲んでくれてもいいではないかという思いもあります。

《アメリカは「中華民国」という既存の建前に基づく国連加盟申請は黙認できても、「台湾」名義での加盟運動や住民投票は「現状の一方的変更」に当たるとして反対した。なお、今回の総統選挙と同時に実施された国連加盟を問う住民投票は、投票総数が有権者全体の過半数に達せず不成立となった》

 許 陳総統は昨年、こうした米台関係の硬直した状況について、「高いレベルの対話のチャンネルがないことで不要な誤解が生じている」と率直に語りましたが、台湾人のなかに、なぜアメリカは台湾の民主化、台湾のアイデンティティを明確に支持してくれないのかという不満があるのは事実ですし、今回の総統選挙で民進党がそうした点を国民党との間で争点にできなかったのも、アメリカが住民投票に反対したからです。その意味でアメリカの姿勢は逆に馬氏を支援していたというふうにも読める。

 ケーシー国務省副報道官は選挙前、「どの候補が当選しても既存関係の枠内で協調する」と述べていましたが、馬氏が当選したことで、アメリカは米台関係の修復を強く期待しているでしょう。馬氏もアメリカとのパイプを強調していました。総統選挙を受けて李登輝氏が語った見通しも、「馬氏はアメリカと複雑でいい関係を持っている」で「中台統一に持ち込むことはない」というものでした。李氏が「複雑」ということの意味はよくわからないのですが、察するに、多様なチャンネルを持っているということなのでしょう。いずれにせよ、馬氏が"3つのノー"の公約を守ることを前提にすれば、対米関係に現実的なプラスが期待できると思います。
 
馬氏に問われる"台湾のために"という姿勢
 
 ――日台関係はどうでしょうか。

 許 馬氏は昨年11月に訪日した際、「反日派」と見られていることの払拭に努めました。滞在中は自民党の森喜朗元首相や各党幹部らと会談し、日台関係の強化と中台関係で「和平、繁栄、安定」をめざす考えを繰り返し説明しました。7月に続いての訪日で、馬氏が日本を重視していることは間違いない。

 ――訪日の成果についての自己採点を、「7月の訪日が甘く見積もって70点なら、今回は辛く見積もっても80点以上」と表していたのが印象的でした。日本との領土問題や歴史認識でも、尖閣諸島(中国名・釣魚島)は「中華民国の領土」という主張を堅持しながら、「(尖閣問題では)一戦も辞さない」というこれまでの発言を、「交渉で解決」と微妙に軌道修正しましたね。

 許 将来的な自由貿易協定(FTA)の提携も視野に入れた経済分野での緊密化や、若い世代による人的交流の促進など実務的な結びつきはこれまでと同じように進められていくと思います。ただ問題は、やはり国民党の抗日イデオロギーが前面に出てきたときです。日本との領土問題や歴史認識に関して李登輝氏は馬氏に、「総統になった以上、対日関係で謙虚になる必要がある」と諭したそうですが、中国が対日強硬姿勢を示すような問題が惹起した場合、それに共鳴してしまうのではないかという懸念はあります。これが民進党であれば、日本に何か抗議する場合でも中国と切り離して行いますが、国民党にそれができるかどうか。その点の懸念があるから李氏もあえて忠告したのでしょう。

 馬氏は当選後、「日台両国の間にはいろいろな面がある。そのなかからわざわざ悪影響をもたらすような問題をほじくり返すことはない。よい面を強調して実務的に処理していけばうまく行く」という発言をしました。恐らくそのつもりだろうと思います。現実に日本と台湾の往来は、のべで年間250万人を超えていますし、台湾の世論調査の結果を見ても、2006年以降台湾人の最も好きな国は日本となっています。私や李登輝氏のように日本語ができる世代よりもはるかに若い台湾人が、日本のアニメーションや文化的なものに関心を持ち、強く共鳴している。この傾向は押し止められないものです。国民党が、本当に民主主義にのっとった政治をするならば、こうした台湾人の民意は無視できない、無視してはならないものです。

 ――問題は日本と中国が天秤にかかったときですね。

 許 日本では5月に胡錦涛中国国家主席の訪日が予定されていますね。日中首脳会談で台湾についてどのような話し合いがなされるのか。報道によると、日本政府は来日時に発表する政治文書に、「台湾に対する従来の立場を堅持し、中国側が求めてきた『台湾独立への不支持』は盛り込まない方針を固めた」(産経新聞2008年4月17日付)という。昨年4月の温家宝首相の訪日時にも同じ要求が出されましたが、日本政府は「中国政府の立場を十分理解し、尊重する」という昭和47年の日中共同声明の線を守り、最終的には中国側が折れて「台湾問題に関し、日中共同声明において表明した立場を堅持する」という文書の発表にとどまりました。

 これは台湾から見ると「現状維持」になる。国民党の馬氏が総統に就くことで中国側がどのような態度に出てくるか。またたとえば、李登輝氏が総統在任中に果たせなかった訪日を馬総統が望んだらどうなるのか。総統選前の訪日にはクレームをつけなかった中国も、台湾総統としての馬氏の訪日は認められないと相変わらずの反対を続けるのか。

 ――訪日そのものが目的でなく、乗り継ぎのために日本に立ち寄るケースも考えられますね。今回ダライ・ラマ14世が訪米の途次日本に立ち寄ったことに中国政府は抗議してきましたが、馬総統にも同じような抗議をするのか。

 許 これは日中問題であると同時に日台、台中問題でもある。かりに日本が馬総統の訪日を受け入れると表明し、それに中国が反対したら国民党はどのような反応をするのか。台湾も日本も、そのとき問われるのは自らが民主主義、自由主義の国であるかどうかということですね。こう考えると、共産党一党独裁の中国とは違うという台湾のアイデンティティも、そこで否応なく映し出される。

 結局、台湾という国が民主主義、自由主義を志向し、その国民であろうとする者ならば、外省人であれ本省人であれ、果たさなければならないことは同じなのです。

 たとえば台湾がこれまで長く国際社会に訴えてきた世界保健機関(WHO)への加盟問題は端的にそれを示しています。当面、加盟申請の名義がどうであれ、台湾の政治指導者たらんとするならば、何とかこの問題を成就させることに努めなければなりません。WHOへの加盟は台湾人にとって切実な願いで、実に国民の94%がそれを望んでいます。WHO年度大会は5月の総統交代の前ですから、陳政権として最後にどの名義で申請するのか。アメリカも日本もフルメンバーとしての加盟は支持してくれていないのですが、オブザーバーとしての参加はずっと支持してくれていた。

 しかし、いまや鳥インフルエンザが変異して新型インフルエンザとして人から人に感染するようになり、世界的な大流行(パンデミック)が危惧される状況では、オブザーバーでもよいと言っていられないのです。台湾は2002年のサーズ禍で、当初WHOの医療支援が受けられず感染被害が拡大し74人が死亡しましたが、WHOから台湾への医療支援はますます制限されているのです。

 調査してみると、2005年に中国とWHOが交わした「国際保健規則(IHR)」の備忘録に、台湾はWHOから直接情報を受け取ることができず、中国を通して受ける旨の記述がありました。「病気に政治の国境線はない」という台湾の主張は退けられたままで、これはWHOの「すべての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」(憲章第一条)という理念に矛盾する人権無視と言うほかありません。

 台湾のWHO加盟は中国によって阻止されている。これに馬総統はどのように対処していくのか。名義にこだわらずに「実」を取るという方策もあるかもしれませんが、このWHOへの加盟問題1つとっても、これまで申し上げてきたように民進党であろうと国民党であろうと、成し遂げなければならない政治課題に差はないわけです。台湾人は馬英九氏を信じた。馬氏がそれに応えることができなければ、あるいは無視するようなことがあれば、攻守所を変えた新たな台湾人の闘いが始まるということになるでしょう。

 ――馬氏が国民党内部の「終極統一派」の顔色を見ながら政治をするのか。あるいは台湾人のことを思って政治をするのか。国民党のなかに馬氏の゛3つの公約℃タ現の足を引っ張る勢力があるとすれば、案外早く馬政権の相貌がはっきりしそうです。

 許 台湾が民主主義の国であるということは、決して後退しないと私は信じています。

聞き手 本誌・上島嘉郎


許世楷氏

1934年、台湾・彰北市で生まれる。
57年、台湾大学法学部卒業。
59年末に来日。
早稲田大学大学院政治学研究科で修士課程。
東京大学大学院法学政治学研究科で博士課程をそれぞれ修了。 法学博士。
津田塾大学国際関係研究所、2004年7月から現職。
著書に『日本統治下の台湾』『台湾新憲法論』『台湾は台湾人の国』(盧千惠夫人との共著)など多数。

 ←「正論」購入を希望される方はこちら(送料無料) ===================================================================
  このコラムは、隔週火曜日に更新予定です。 ===================================================================

Copyright©EIS,Inc.2008 All rights reserved.