2008年5月10日号の注目記事


 Electric vehicles (Business)
 Charge!

 日産のカルロス・ゴーン社長が、自動車産業を牽引する新たな挑戦を始めた。炭酸ガス、ゼロ・エミッションの電気自動車を2010年までに米市場で販売を開始するというのだ。2012年までには、大きな車の市場がある全世界での販売を拡げていく。

 こうした電気自動車に主体をおいた開発を行ったのは、石油の値上がりや炭酸ガス排出基準が厳格になるということよりも、中国などの新興市場での急速な発展が環境に悪影響を及ぼす心配からという。

 これまでの電気自動車は、電池の制約などがあり走行距離も限定されていることが大きなネックになってきた。同社では、日本のNECと共同で電池開発を行ってきた。「巨額の投資を行い」開発した新たなリチウム・イオン電池では、車は320キロの走行が可能になり、充電も従来のガソリン車の給油と同じ時間で70%の補充が可能となるなど、性能がかなり高まっている。こうしたことから、販売攻勢にかかる準備が整ったと判断したようだ。価格も2万5000ドル程度に収まるようだ。ゴーン社長の話では「同じモデルでは、ガソリン車より安くなる」という。

 販売は、当初は自社で充電設備を持っている運送会社などが対象になるが、プロジェクト・ベター・プレイス社の協力のもと、米国内で50万箇所の充電スタンド網を設置し、2012年からは、一般のユーザーにも販売を開始する計画だ。


 Microsoft and Yahoo! (Business)
 No deal

 マイクロソフトがヤフーに買収を仕掛けて、業界の大きな注目を集めていたが、双方が折り合わず、5月3日にマイクロソフト側が買収を諦める結果に終わった。当初、1月31日時点での買収額は446億ドルだった。その後、30億ドル上乗せして475億ドルの提示を行ったが、ヤフー側はさらに50億ドルの上積みを要求、決裂してしまった。翌日、ヤフーの株価は大きく下がってしまった。マイクロソフト側は、ヤフーの買収価値をなくすために、ヤフーの広告を競合他社のグーグルにアウトソーシングする準備をしていたと非難している。

 もっとも、同社のバルマー社長は「ヤフーとヤフー社の株主は莫大な価値を置き去りにしたのだ」と書いた手紙をヤフーに手渡している。これは、ヤフーの株主たちから「なぜ買収に応じなかったのか」との圧力がかかるとの計算も込めているとみられ、今後、再度の話し合いがあるかもしれない。


 North Korea  (Asia)
 Let them eat Juche

 「チュチェ思想でも食べさせておけ」――とは、ひどい話だが、世界の嫌われ者国家、北朝鮮で再び大規模な食糧難が発生しているようだ。ワシントンにある研究所の最近の報告書によると、ここ1年間でヤミ市場の食糧価格の相場が、3倍以上も急騰しており、すでに一般国民は満足な食事ができなくなっている。人々は、食事に木の皮や草を混ぜて食しているようだ。こうした事態に、世界食糧計画(FRP)は先月、「深刻な悲劇になる」として、食糧の緊急援助を各国に要請した。

 すでに食糧配給システムが各地で崩壊しており、いくつかの市では、昨年から配給切符を受け取っていないという。食糧だけでなく、電力や燃料なども不足している。ことは通常、政府の手厚い保護を受けている首都の平城でも同じだという。また、同国西中央部では、人々が餓死し始めている。

 問題は、北朝鮮が核問題で、6カ国協議など関係各国との協力を全く放置したままにしている点だ。食糧支援の容易のある米国も韓国も、核問題で何らかの進展が見られないかぎり、無条件の支援はできない情勢だ。となると、後は国民を強健で抑圧するしかないわけだ。10年前の大飢饉のときは、何万人もの人々が、中国国境を越えて逃げ出した。今年2月には、13人の男女が、国境越えをしようとして捕まり、銃殺刑に処せられたという。この国家には国民の逃げ場はないのだ。


 China and Tibet (Asia)
 A lama in sheep's clothing?

 北京オリンピックの聖火リレーが、「チベットを解放せよ」との世界中の人々からの抗議の声で、とんだイベントに成り果ててしまったが、国際的な政府間の要請を受ける形で、中国はようやくインドにいるダライラマの代理人との会合を持った。

 会談で、チベット側は、1.寺院からの警備当局の引き上げと、国内での弾圧の終結、2.僧侶に対しダライラマを非難するように「愛国心教育」をしない、3.チベット暴動の原因に関する国際的な調査団の導入、4.政治犯の釈放、5.暴動で逮捕された人たちへの公正な裁判――などを要求した。だが、中国側からは前向きな回答はなされなかった。

 国営のメディアなどは、相変わらずダライラマは「人面獣心の悪魔」だと非難しており、西側ジャーナリストのチベット入国は厳しく規制されている。先月、ラサ市内で秘密裁判が行われ、30人が3年から終身刑までの判決を一方的に下された。これに対し、北京の数人の弁護士が弁護を申し出たが、法務省から弁護士資格を剥奪すると脅されたという。ダライラマ側は中国との穏健な対話を求めているが、中国側はチベット人に対するダライラマの影響力の大きさを恐れており、まだまだ警戒心を緩めそうにない。


 Education (United States)
 Red ties and boys' pride

 黒人地区などで暴力事件の増加で悩んでいる米国のシカゴ市で、いま大きな教育改革が行われている。同市のデイリー市長が4年前に宣告した「ルネッサンス2010」という教育改革計画の一環で、2010年までに市内の最もすさんだ地区に100校の学校を新設しようという意欲的なもの。市長は市内の経済界のリーダーに呼びかけて、ルネッサンス学校基金(RSF)を立ち上げ、この計画を支援している。これは、公共教育の分野に民間資金を導入して、教育事業に参画してもらおうという試みだ。事業家に学校を新設させ、自分たちの好きなように(長い教育時間、独自の給料体系など)運営させる。市からは生徒1人当たりの助成金が来るが、自ら基金を集めることもできる。学校の成功には、優秀なリーダーの存在、地域社会の協力、明白な使命感に基づいた厳格なカリキュラムの構築などが必要とされている。目下、55校の開設がなされ、今後100校の目標以上に開校されると見込まれている。公共教育の問題を抱えている日本にとっても、参考になるかもしれない。



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