2007年12月8日号の注目記事


 Real and virtual worlds  (Leaders)
 Better together

 今週のエコノミスト誌は、3カ月に1度のテクノロジーに関する特集(Technology Quarterly)を行っている。

 今回は、インターネット上に構築された仮想空間と、現実の社会との間の新たな関係について論じている。インターネットが出現した初期の頃には、仮想空間を現実世界のさまざまな束縛から切り離されたデータだけが存在する世界とみなしていて、1996年春には、一部の活動家によって「サイバースペース独立宣言」なるものが出されたほどである。そこでは「我々は、いかなる特権、人種的、偏見、経済力、軍事力、生誕の場にとらわれることなく、すべての人が自由に入ることのできる世界を作りあげる」と高らかにうたっている。反対に、仮想空間が、人間をチャットやゲームの世界に入り込ませることによって、現実の友人や家族との対話をする時間が失われ、人間を「究極の孤立化をさせるテクノロジー」と評される向きもあった。

 しかし、双方の見方は間違っていないようだ。仮想空間へも、現実世界からのアプローチ――税金、犯罪、詐欺など――が行われるようになっている。

 今後のインターネットの世界は、グーグルアースのように現実世界と仮想世界が大きく融合していく方向に向かっている。テクノロジーの進化が、こうしたことを可能にしていく。現実世界と仮想世界が、相互補完的な関係を深めて、さらに連携を深めていくのであろう。


 Iraq (Middle East & Africa)
 In dribs and drabs

 イラク戦争の4年間で、宗派間の殺りくなどを逃れた200万人ともいわれる脱国者の群れが少しずつ帰国し始めている。赤十字によれば、9月中旬から11月までに、シリアから2万5000人のイラク人が戻ったとしている。たしかに、米軍の増強により、首都バグダッドは、数カ月前より安全になっている。イラク国内での住民の死者数も夏からは半減しており、家に閉じこもっていた人々も街に出てくるようになっている。市内を通って通勤する人も増え、夜ではレストランが賑わうようになってきた。

しかし、帰国者の増加の理由は、これではない。かつて、イラクからの難民を歓迎していた周辺諸国が、難民の増加に、冷たい対応をし始めたのが大きな原因である。難民に職を探すことができず、結局は資金が底をついて帰国を余儀なくさせられるケースも多い。

レバノンでは、当局に捕まった難民たちは「自主的に」帰国するか、無期限の拘留を受けるかの厳しい選択を迫られると言う。エジプトでも、「歓迎されていない」としてビザの更新に法外な値段を請求される。

しかし、帰国したとしても、イラク政府はこうした難民を迎える準備ができていない。全国各地に散らばる200万人の難民の群れを増加させるだけのようだ。


 Venezuela (Leaders)
 The beginning of the end for Hugo Chavez

 米国に対抗し、「21世紀の社会主義の建設」を標榜していたベネズエラのチャベス大統領だが、12月2日に、憲法改正の国民投票を行った。わずかな差で否決され、終身大統領となる道を閉ざされてしまった。わずか1年前に、さらなる6年間の任期を地すべり的な大勝利で大統領として選ばれた同氏としては、不本意な結果だったに違いない。

 彼は、再度、憲法改正を試みようとしているが、これも失敗する可能性が大きい。それは、今ベネズエラで、彼の政権を支えてきた人々の基盤が揺らいできているためだ。学生たちの間で、新たな活気に満ちた反対運動が起きている。チャベス支持層の間で、無関心と幻想が拡大している。この背景には、「ボリビア革命」が機能せず、むこうみずな拡大主義路線を走っている経済政策によるところが大きい。

 一般住民は、石油の高騰にもかかわらず、ミルクを買う金すら欠いているのだ。今後は統制経済の道を歩むにしても、他手段をとるにしても厳しい状況が待ち受けている。

 明るいきざしは、軍隊とチャベス支持層が、民主主義的志向を持ち始めたことで、平和的な政権交代への道が開かれるかもしれない。いずれにせよ、旧式な社会主義概念を現代に持ち込もうとしたチャベス政権は、国民にそっぽを向かれる日が近づいているといえそうだ。


 God and the Olympics  (Asia)
 The other sports ministry

 北京オリンピックが近づいているのか、押しかける外国人選手たちの礼拝をどうするかで、新たな問題が持ちあがっている。一応、中国のオリンピック委員会は、そのホームページで、「中国は信教の自由を守り、いかなる宗教にも敬意を払う」と書いている。だが、やはり共産国であることから、外国の聖職者たちにはアレルギーを示しているのである。とりあえずオリンピック村には、宗教センターがおかれ、選手たちは、自己の信仰にそった礼拝行事などをすることが許されている。

 しかし、問題は、こうしたセンターの聖職者たちは、中国が認めた教会に所属していなければならないことだ。特に、海外からやってくるカトリックの神父たちは、問題になるとみられている。中国はバチカン公国とは外交関係がなく、これまでも、カトリックの神父たちが、国策に協力しないことで投獄されている。

 また、プロテスタントに関しても、自宅で教会を開く牧師は、投獄されるケースもある。この3月、同国のオリンピック委員会は、礼拝行事を行うことで、外国人の聖職者は招かないと発表している。しかし、従来のオリンピックの慣行では、主催国は外国人聖職者を招待するということで、選手団の中には、通常、こうした人々は含まれていた。オリンピックが近まるにつれ、中国がこうした問題にどう対処していくのか、注目が集まっている。


 Kazakhstan and the OSCE  (Asia)
 Joining the club

 石油やウラニウムの開発で大きく経済力をつけてきた中央アジアのカザフスタンが、政治面でも国際的な力をつけてきた。11月30日に、欧州安全保障協力機構(OSCE)の2010年の議長国に選ばれたのである。この決定に同国上層部は喜びに沸いた。

同機構は、全欧の56カ国が参加している大組織であるが、同時に人権尊重もうたっており、政治的に反対勢力を抑圧しているカザフスタンが選出されたことに首をかしげる向きもある。

もっとも、旧ソビエト連邦に所属していた国家がOSCEの議長をつとめるのは、初めてのことである。いま、同国は、中国、ロシアと、欧米との綱引きの中にはさまれており、西側からすれば、人権問題に目を閉じてでも、少しでも自分たちに引きつけておきたいといった思惑が働いているようだ。

でも、こうしたことが契機となって、民主化も多少進むのかもしれない。2010年には、選挙法の改正も予定されており、報道の自由も保障されるといっている。


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