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The Economist 2010年3月20日号 (Leaders)
国際取引と資源保護  Trade and conservation
マグロを増やす時節  Fin times  (2010年3月18日)

クロマグロを禁輸せよ――だが持続可能な漁獲への明確な道筋を設けよ

堂々としたクロマグロは、地中海と大西洋で少なくとも7000年にわたって、人々の富、健康と幸せを維持するために漁獲されてきた。だが過去40年間の乱獲により、その数は80%以上も減ってしまった。今や状況があまりにも悪化したため、クロマグロは今週、ドーハで開かれているワシントン条約(絶滅の恐れのある動植物の種の国際取引に関する条約=CITES)締約国会議で、十分に絶滅的な危機下にあるとして商業取引が禁止される事になるかもしれない。

当初クロマグロは、政府間団体の大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)で管理されることになっていた。だが驚くほど業務が非効率的だったため、「全てのマグロを捕獲するための国際的な陰謀(ICCAT)」とあだ名がついたほどだ。最近のある年の例では、科学的な助言は、最大1万5000トンまでのマグロの捕獲を指示していた。これに対しICCATが課した制限は3万トンであり、実際には6万トンが捕獲された。クロマグロが急速に消滅しているのも、驚くに当たらない。

理論的には、一時的な禁輸措置は自律的な資源回復へとつながるはずだ。だが実際はどうか? これまでも時折本誌が指摘してきたように、貿易の禁止は通常いい考えではない。野生生物の場合でも、禁輸は少なくとも4つの条件を満たす必要がある。第1に、問題の種は国際取引によって深刻な脅威にさらされていなければならない(もし問題が生息地の消失、国内利用、および疾病によるものである場合、禁輸は役に立たない)。第2に禁輸は、需要を抑える措置と一体となっていなければならない。第3にその措置は、絶滅に瀕している種を保護するための誘因を損ねてはならない。そして最後に、その措置は、種が生息する場所の政府や住民によって支持されていなければならない。

そうした条件が満たされない場合どうなるかは、象、サイや虎に適用された長期的な禁輸の結果を見れば分かる。禁輸が時として大型の陸上動物の保護を損なってきた理由は、それが事実上、動物の生命を無価値にしているからだ(ただしツーリズムが可能な少数の場所を除く)。なぜ現金収入を伴わない存在に現地政府が、その保存のためにお金を使う必要があるのか? なぜアフリカの農家が、彼の生計の元をしばしば食べてしまう無価値な動物のために土地を放棄しなければならないのか?

漁網をしぼる

クロマグロ禁輸論は立てやすい。それが――ヨーロッパウナギ、ピンクと紅サンゴ、メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)など最近CITESリストに載せられた数多くの種と同じように――海洋生物だからだ。それはつまり、生息に関して人間と魚の競合が存在しないことを意味する。さらにクロマグロは、広く国際取引されている(大半は日本向け)。だから一時的な禁輸措置は、本当に違いをもたらすという理由で正当化される。日本での需要を減らすことは難しいだろうが、大半のクロマグロが先進世界のどこかで漁獲されているので、供給を減らすことは可能である。その一方で消費者サイドは、自分たちが食べている魚の来歴や持続性に関して益々関心を強めている。 うまくいけば、これら全てが資源回復をもたらすかもしれない。そしていずれクロマグロの国際取引も、持続可能な形で再開できるかもしれない。

より広義では、CITESに署名した国々の政府は、その規則を監視して強制するためにもっと多くの努力を払う必要がある。また危険にさらされている全ての野生生物種の、数だけでなく価格を追跡することによって、将来に備える必要がある。種の禁輸は、最後の手段であるべきだ。もしクロマグロや他の種が適切に管理されるなら、その漁獲は、種の消滅を早めるというより保護の確保に役立つかもしれない。


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